2013年07月05日

イレギュラー

今回ご紹介させていただくのは、『イレギュラー』(角川文庫・三羽省吾著)。
まずは、あらすじから。

イレギュラー(本書より抜粋)
村が水害にあい、練習もままならない蜷谷(になたに)高校・通称ニナ高の野球部。剛速球投手コーキも、日々その素質をくすぶらせていた。
そんなニナ高に目を付けた名門野球部K高。格下相手を練習台にしようというのだ。
自分の球に絶大な自信を持つコーキは、合同練習初日に勝負を挑むが結果は特大ホームラン。
プライドをボロボロにされたコーキはリベンジに向けて、猛練習を開始した!
ダメダメ野球部のむやみに熱い青春ストーリー!!


マイナージャンルだけれども、世間の認知度は低いけれども、やっぱりスポーツ小説が好きだー!!
と、読後に叫びたくなるほど、熱く、切なく、爽やかな作品です。
ある作家さんが、「冒頭で読者を引き付けることは誰でも出来るが、本当に良い作品は尻上がりになる」とおっしゃっていましたが、まさしくその通りだと実感します。

最初は名門野球部K高と、甲子園なんて縁遠いニナ高野球部の実情が淡々と描かれていきます。
K高は、野球の強豪校にありがちな軍隊式指導に疑問を持つ監督が、己の理想とするやり方でチームを導いていこうとするのですが、上位進出となると老練の監督によって鍛えられた甲子園常連校に阻まれる。
理想を追い求めた結果、K高野球部は“純粋培養”で育てられた作物と同様、土壇場でのイレギュラー対応に弱いという弱点を抱える事となった。
それを克服するには、選手達の闘争心が必要不可欠と考えたK高の監督が目を付けたのが、村が水害に遭い、練習もままならないニナ高野球部。
ところが、このニナ高野球部は一筋縄ではいかない部員達ばかり。自然に囲まれた村で育ったこともあり、町育ちのK高ナインとはことごとく噛み合わず、ついには合同練習中に勝負して白黒つける事になるのですが――

これ以上はネタバレになるので控えますが、この作品が面白くなるのは此処からです!
野球をするのに不自由のないK高野球部と、避難所生活を支える為に、アルバイトか、練習か、とシビアな選択を迫られるニナ高野球部の選手達。
普通なら、不遇な選手がエリート達の鼻を明かしてハッピーエンドとなるのでしょうが、そうではありません。
シビアな現実に大人も子供も傷つきながら、物語の最後には登場人物それぞれが「何か」を手にしています。
甲子園の季節を迎える前に、是非、ご一読を!


posted by 宮城あおば at 16:21| Comment(0) | スポーツ小説紹介