2013年03月28日

一瞬の風になれ

なかなか、こちらのコンテンツに手が回らなくて、自分でも歯がゆい思いをしておりますが、細く、長く、続けてまいりたいと思います。

さて、今回紹介させていただくのは、有名なスポーツ小説をもう一本。
『一瞬の風になれ』(講談社・佐藤多佳子著)です。

あらすじ(本書より抜粋)
春野台高校陸上部。とくに強豪でもないこの部に、二人のスプリンターが入部した。
新二と連。二人は才能の残酷さ、勝負の厳しさに出会いながらも、強烈に感じる、走ることの楽しさ。
意味なんかない。でも走ることが、単純に、尊いのだ。
爽快陸上青春小説。


この作品、実は私も拙宅に来てくださる読者の方から教えてもらいました。
普通、スポーツもので二人のキャラが登場する場合、努力型と天才肌に分かれて、最後は努力型の主人公が勝利を得る、というパターンが多いと思うのですが、『一瞬の風になれ』はひと味違うのです。

主人公の新二は、もとはサッカー少年で、同じくサッカー選手で、何でも出来る(ように見える)お兄ちゃんにコンプレックスを抱いています。
通常のスポ根ものなら、そこから奮起して兄を超える下剋上路線に走ると思うのですが、新二は進路変更をするのです。陸上へ。
その過程も、最初から強い信念があるでもなく、でも、十代ってそんな感じだったなぁ、と共感できる展開で、そういう、等身大の少年の感性が、この作品には随所に描かれています。
また、新二と正反対の性格の連も良い味を出しています。
彼は短距離のセンス抜群。いわゆる天才肌の部類に入るのですが、練習が嫌いで、自分の才能を持て余している感があります。
そんな彼にも、陸上未経験の新二が同じフィールドに入ってきたことで、少しずつ変化が起こります。
競技の世界って、強さがものを言いますが、荒っぽければ良いというものでもなくて。
タフさと繊細さと、両方をバランスよくコントロールできる選手が本番で強さを発揮すると思うのですが、心身共に未成熟な少年達ですから、なかなか上手く行かない。
新二も連も、それぞれに違う繊細さを持っていて、未熟な彼等が様々な経験を通して成長していく様は、傍観者であったはずの読者もいつの間にか巻き込んで、多くの感動を与えてくれます。
特に、クライマックスのリレーは、陸上をご存じない方でも、他人事ではいられないと思います。
全三巻と長編作品ですが、その分、読み応え充分です。まだの方は、是非!


posted by 宮城あおば at 21:59| Comment(0) | スポーツ小説紹介