2013年11月03日

青森ドロップキッカーズ

ウィンタースポーツの季節到来ですね。
今回ご紹介させていただくのは、『青森ドロップキッカーズ』(小学館・森沢明夫・著)。
まずは、あらすじから。

青森ドロップキッカーズ(本書より抜粋)
いじめられっ子の中学生・宏海と、中途半端な不良の雄大。そしてトップを目指して氷上で戦うアスリート姉妹、柚香と陽香……。
見た目もキャラもまったく違う凸凹な4人が、カーリングホールで巻き起こす、このうえなく爽快で泣ける青春小説の決定版!


カーリングの名前は知っているけど、ルールはよく知らないなぁ。
そう思って手に取ったのがこの作品でした。
最初にガツンとやられたのは、本の帯に書かれていたこの言葉。

カーリング精神
一、カーラーは、不当に勝つなら、むしろ負けを選ぶ。
二、カーラーは、ルール違反をしたとき、自ら申告する。
三、カーラーは、思いやりを持ち、常に高潔である。

私、自分が意気地がなくて、腹黒いからでしょうか。
「高潔」って言葉に魅力を感じてしまって……(笑)。
難しいルールが出てきたら、そこの個所は読み飛ばすつもりで(←失礼!)本書を開いたら、そんな心配は無用で、どの場面にもカーリングを知らない読者への配慮がなされていて、とても読みやすかったです。
だからと言って、入門書的な薄っぺらな内容ではなくて、カーリングという競技の奥深さ、面白さ、厳しさも描かれていて、読み応え充分です。

何と言っても、主役の四人 ――紆余曲折があって、この四人が最後にカーリングのチームを組むことになるのですが―― の凡人っぷりが素敵です。
いじめられっ子の中学生・宏海と中途半端な不良の雄大。アスリート姉妹の柚香と陽香。
誰も特別な才能を持ち合せている訳ではなくて、ただ人よりもちょっと繊細だったり、傷つき易かったりするのだけど、それもたぶん、誰もがそういう部分を持っているはずで。
性格、環境、立場も全部バラバラな四人が、個々の問題に向き合いながら、仲間の痛みを知ろうとする。支えようとする。
ああ、だからカーリングなんだ。カーリングじゃなきゃ成り立たないお話なんだ!と納得、満足、感動の作品でした。

恥ずかしながら、私、三回ほど涙腺が緩んでしまいました。
作品のあとがきに添えられていた「『憂』の隣に人が寄り添うと『優』しくなる」という作者様の言葉が印象的でした。
優しい目線で描かれた氷上の高潔で熱いスポーツを是非、体感してみてください。おススメです!


posted by 宮城あおば at 21:29| Comment(0) | スポーツ小説紹介

2013年10月24日

サッカーボーイズ

ついこの間まで「暑い!」と文句を言っていたのに、あっという間に涼しくなりましたね。
読書の秋。スポーツの秋。スポーツ小説の秋ですよ!
マイナーカテゴリーですけど、同士の皆さん。細々と楽しんでまいりましょうね。
さて、今回ご紹介させていただくのは、『サッカーボーイズ』(角川文庫・はらだみずき・著)。
まずは、あらすじから。

サッカーボーイズ(本書より抜粋)
ジュニアサッカーチーム・桜ヶ丘FCの武井遼介は、6年生になって早々に、キャプテンの座もレギュラーポジションも失い、初めて挫折を味わう。そんな中、新監督・木暮との出会いを通して、遼介は自分がサッカーをやる意味を見つめはじめる……。個性的なチームメイト、大人たちとの関わりの中で、悩み、もがき、成長していく少年たち。ひたむきな気持ちを呼び起こす、熱く切ない青春スポーツ小説!

舞台はジュニアサッカーチームで、主人公は武井遼介という小学六年生の男の子。
スポーツ小説、あるいは青春小説の場合、大抵、登場人物は中学生よりも上の年齢に設定されていることが多いのですが、この作品は小学六年生の男の子が中心で、しかも舞台は学校の部活動やサークルではなく、地元のジュニアサッカーチーム。
子供の視点というのは、読者の共感の得られにくい切り口だと思うのですが、それをチーム内の小さな出来事を取り上げ、丁寧に描写していくことで、よりリアルな現実として見せてくれます。
未成熟な少年なりの葛藤があり、理不尽と映ることもたくさんあって、少しずつ、少しずつ成長……というより、変化していきます。
それは主人公の少年だけに留まらず、周りのチームメイトも、監督も、皆それぞれに「変化」をしていく。
この作品は、十三歳、十四歳と話が続くので、登場人物それぞれの「小さな変化」の積み重ねが全体を通すと「成長」に繋がっていて、シリーズならではの醍醐味が味わえます。
少年と同じ目線、あるいは保護者目線(?)、指導者目線、と多くの方が共感できる作品だと思います。
まだ読んでいない方は、是非!おススメです。



posted by 宮城あおば at 22:12| Comment(0) | スポーツ小説紹介

2013年09月05日

ざまあみろ!

や、これタイトルですからね。私が血迷って暴言を吐いたわけでは……(汗)
今回ご紹介させていただくのは、『ざまあみろ!』(幻冬舎アウトロー文庫・立嶋篤史著)。
元全日本キック・フェザー級王者・立嶋篤史氏が書かれた自伝です。
スポーツ小説ではないし、筆者も小説家ではないので、そのジャンルを読み込んだ方には疑問符が付く個所もあるかもしれません。
でも、出来過ぎた小説にはない、フィクション、それも生の声だからこその迫力があります。
まずは、あらすじから。

ざまあみろ!(本書より抜粋)
苛烈なイジメに苦しんでいた少年がキックボクシングと出会い、過酷なタイ修行を経て、いつしかチャンピオンにまで上り詰めていく。
しかし、不器用な生き方しかできない男の人生は、順風満帆では終わらなかった。
ファイトマネーの未払い、2度にわたる交通事故――。
かつて、カリスマ的に人気を誇ったキックボクサー、立嶋篤史が歩んだ流転の人生。


どうして彼の周りには、ろくでもない大人しかいなかったのか。
読みながら、何度も思いました。
地元のサッカーチームに所属していた主人公は、チームメイトのみならず、指導者からも酷い扱いを受けます。
そのイジメの輪は広がって、小学校でも、中学校でも、部活動でも起こります。
これは昔も今も変わらないと思うのですが、大人が思う以上に子供の世界は狭くて、それでいて子供は健気な生き物で、だからどんなに理不尽なことをされても、なかなか外に向けてSOSが出せずに独りで抱え込む。
作中にはイジメの内容は綴られていますが、当時の彼がどんな心境だったか、細かい描写はありません。
恐らく立嶋少年も「逃げる」と「耐える」を繰り返していたのだと思います。
そして、そのことで精一杯で、自分の感情に気づく余裕すらなかったのかもしれません。
何も救いとなるものがない中で、彼が唯一、自分の声に気づく機会が訪れます。
それがキックボクシングとの出会い。強くなりたい、と願う心の声です。
キックボクシングを始めてからも彼には様々な試練が襲いかかるのですが、ここから先は読んでからのお楽しみということで。
よくスポーツ小説に求められるような読後の爽快感は、たぶん、ないです。(作者の方、ごめんなさい!)
ハッピーエンドでもありません。
でも、このお話は紛れもない事実で、彼は今もその現実と向き合っている。
そこに心揺さぶられるものを感じる方は、是非、一度手にとって読んでみてください。


posted by 宮城あおば at 13:49| Comment(0) | スポーツ小説紹介

2013年08月18日

バッテリー

毎日、暑いですね〜!
本宅は夏休みに入っておりますが、こっちは月一しか更新しないのにお休みするのも気が引けて……
貧乏人の性ですね。仕事に限らず、休みを取ることに罪悪感を抱いてしまいます。(苦笑)

さて、今回ご紹介させていただくのは『バッテリー』(角川文庫・あさのあつこ著)。
あまりにも有名な作品なので、語るまでもないかと思ったのですが、やっぱりね、『イレギュラー』を語っておいて、同じ野球を題材にした『バッテリー』をスルーするのも如何なものかと考え直して、触れてみることにいたしました。
まずは、あらすじから。

バッテリー(本書より抜粋)
「そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい。 ――関係ないこと全部すてて、おれの球だけを見ろよ」
岡山県境の地方都市、新田に引っ越してきた原田巧。天才ピッチャーとしての才能に絶大な自信を持つ巧の前に、同級生の永倉豪が現れ、彼とバッテリーを組むことを熱望する。
『これは本当に児童書なのか!?』
ジャンルを超え、大人も子どもも夢中にさせたあの話題作が、ついに待望の文庫化!

あらすじの最後の一文は要らなかったかもしれないですが、一応、本書に忠実に載せておきます。
私、よほどのことがない限り、文庫本になるまで待つ主義なんですが(これも貧乏人の性ですな・苦笑)これ、文庫だとTからYまであるんですよねぇ。
因みに全巻持っています!
上のあらすじは、その中のTからの抜粋です。

どのスポーツにも、いや、たぶん、何事にも言えるのでしょうが、その道を究めようとすればするほど、相反するものの葛藤が付いてまわると思います。
主人公・巧の場合には、繊細さと強さの葛藤、といったところでしょうか。
人より敏感に反応するアンテナを持っているからこそ、より高い技術も習得できる。
でも、勝負の世界では、強靭な精神力も求められる。
その繊細さと強さの振り幅が大きくなればなるほど、不安定になっていく。
まして心身ともに未成熟な中学生なら尚更で、それは野球のみならず、彼の日常生活においても、様々な形で顔を出して、主人公を悩ませるのですが、そこで登場するのが女房役のキャッチャー・豪ちゃん。
豪ちゃんは、巧のように振り幅が少ない分だけ、心身共に安定していて、社交性もある。
器用でバランスの良い中学生なんですね。
でも、彼は彼で、巧のその突出した才能を羨ましく思っているし、大事に守ろうとも思っている。
ただ純粋に野球がしたい。最高のボールを投げたい。投げさせたい。
巧と豪の想いとは裏腹に、彼等を取り囲む環境は単純ではなくて、野球部の先輩との確執を始め、様々な問題が起こります。
壁にぶつかり、頭打ちをしながらも成長していく彼等に、握り拳を作ってエールを送った読者も多いのではないでしょうか。
世代を超えて楽しめる作品ですので、まだの方は是非!
そして、子供の頃に読んだきりだという方も、大人になって読み返してみると、新たな発見があるかもしれません。
おススメです。
posted by 宮城あおば at 07:53| Comment(0) | スポーツ小説紹介

2013年07月05日

イレギュラー

今回ご紹介させていただくのは、『イレギュラー』(角川文庫・三羽省吾著)。
まずは、あらすじから。

イレギュラー(本書より抜粋)
村が水害にあい、練習もままならない蜷谷(になたに)高校・通称ニナ高の野球部。剛速球投手コーキも、日々その素質をくすぶらせていた。
そんなニナ高に目を付けた名門野球部K高。格下相手を練習台にしようというのだ。
自分の球に絶大な自信を持つコーキは、合同練習初日に勝負を挑むが結果は特大ホームラン。
プライドをボロボロにされたコーキはリベンジに向けて、猛練習を開始した!
ダメダメ野球部のむやみに熱い青春ストーリー!!


マイナージャンルだけれども、世間の認知度は低いけれども、やっぱりスポーツ小説が好きだー!!
と、読後に叫びたくなるほど、熱く、切なく、爽やかな作品です。
ある作家さんが、「冒頭で読者を引き付けることは誰でも出来るが、本当に良い作品は尻上がりになる」とおっしゃっていましたが、まさしくその通りだと実感します。

最初は名門野球部K高と、甲子園なんて縁遠いニナ高野球部の実情が淡々と描かれていきます。
K高は、野球の強豪校にありがちな軍隊式指導に疑問を持つ監督が、己の理想とするやり方でチームを導いていこうとするのですが、上位進出となると老練の監督によって鍛えられた甲子園常連校に阻まれる。
理想を追い求めた結果、K高野球部は“純粋培養”で育てられた作物と同様、土壇場でのイレギュラー対応に弱いという弱点を抱える事となった。
それを克服するには、選手達の闘争心が必要不可欠と考えたK高の監督が目を付けたのが、村が水害に遭い、練習もままならないニナ高野球部。
ところが、このニナ高野球部は一筋縄ではいかない部員達ばかり。自然に囲まれた村で育ったこともあり、町育ちのK高ナインとはことごとく噛み合わず、ついには合同練習中に勝負して白黒つける事になるのですが――

これ以上はネタバレになるので控えますが、この作品が面白くなるのは此処からです!
野球をするのに不自由のないK高野球部と、避難所生活を支える為に、アルバイトか、練習か、とシビアな選択を迫られるニナ高野球部の選手達。
普通なら、不遇な選手がエリート達の鼻を明かしてハッピーエンドとなるのでしょうが、そうではありません。
シビアな現実に大人も子供も傷つきながら、物語の最後には登場人物それぞれが「何か」を手にしています。
甲子園の季節を迎える前に、是非、ご一読を!


posted by 宮城あおば at 16:21| Comment(0) | スポーツ小説紹介